企業にとって挑戦心のないサラリーマン社長が最大のリスク

  だれも手がけたことがない新しい事業に挑戦するとき、いわゆる業界と呼ばれるものは存在しません。未知の領域なので、周りとやり取りする共通言語もありません。

 そうした新規事業に挑戦する起業家は、孤独な戦いを強いられることになります。

 どうしても似たような思いの仲間がほしいなら、事業イノベーションのチームを結成してビートルズのメンバーのように欠点を補い合いながら前へ進んでいくしかないのです。

 むろん、想像力や構想力を駆使して次のステップに進むための戦略、戦術を考え続けなければなりません。

 マイクロソフトやアップル、グーグルなども、孤独な創業者が世界を劇的に変えるような破壊的イノベーションを起こした結果として大きく成長してきたのです。

 そうした企業は、意外にもバブル崩壊前後や不況期に創業。グーグルもITバブルが崩壊間近の設立で、フェイスブックもSNSブームが沈静化したころに創設されています。

 経営者に揺るぎない信念があったからこそ資金繰りなど厳しい環境のなかで生き延び、優位性を持ったベンチャー企業になれたのです。

 その点、日本企業に多く見られるコンセンサス型の意思決定をしていると、リスクを取ったり、逆張りしたりすることができません。

 新しい事業を成功させた起業家には、事業を遂行していく上で揺るぎない信念やポジティブな姿勢があります。何かうまくいかないことがあっても、それに改良や改善を重ねて何とか事業を成功させようとします。経営方針が安易に揺るがないので、事業を成功させるためのアイデアも次々と湧いてきます。

  破壊的イノベーションが進展する中で、企業社会が求められていることは旧態依然とした経営姿勢から抜け出せないまま今にも潰れそうな企業を救済することではありません。むしろ、将来性のある技術やサービスを生み出している企業に投資して新しく雇用を生み出すことなのです。

  ジョブスは生前、みずから「国宝」と呼んで尊敬していた人物がいます。それは、ポラロイド社の創業者エドウィン・ランド氏。

 ランド氏は、生涯で500以上の特許を取得。なかでも「合成偏光子」はサングラスやクルマのヘッドライトに活用され、3D映像の誕生の一助にもなっています。

 愛娘の一言がきっかけで、ランド氏がインスタントカメラの「ポラロイドカメラ」を開発したのは有名な話です。

 ランド氏は、たとえムダと思えるような研究であってもそこに何らかの価値を見出していたといいます。

 たとえば自社の研究者に「インスタントカラー写真の作り方」を考えるように命じて2年もの「考えるだけの時間」を与えたり、さらに「雑多研究部門」なる部署まで設けたりしているのです。むろん、そのために潤沢な予算も用意しています。

 サラリーマン社長が増えた日本の企業社会では、そうした禅のような中心軸を持って将来を見据える経営者が少なくなっています。

 挑戦心のないサラリーマン社長が増えると、もちろん似たような社員も増えていきます。要するに、企業にとって挑戦心のないサラリーマン社長は最大のリスクということです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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