実社会では機会の平等なんて保障されていない
日本でも、富裕層と貧困層との格差が拡大。その世代を超えた固定化が進み、貧困層の子どもには「教育を受ける機会の平等」なんて保証されていません。
親の役割でもっとも重要なのは、そうした現実を早い時期から子どもに教えておくこと。
それで経済的に恵まれない子どもは自立心が芽生え、自立心は向上心に繋がり、なかにはハングリー精神で心を武装していく子どもも出てくるはず。
ところで、最近、若者に明らかな異変が起こっています。
有名大学の現役女子大生がカラダを売ったり、男子学生が振り込め詐欺に走ったり、優等生が宗教まがいの自己啓発にハマったりしているというのです。
女子大生がカラダを売るのは、遊ぶカネがほしかったりブランド品を買ったりしたいからではありません。それで、生活費や学費を賄っているのです。
なかには何の根拠もなく明るい未来を夢見て、借りられるだけフルで奨学金を借りている学生もいるといいます。
資本主義のルールとして、借りたお金は返さなければなりません。そのため今後、かなりの数の学生が社会に出たあと経済的に破たんすると予想されています。
今の奨学金制度の問題点は、雇用環境の変化に制度そのものがうまく対応できていないところにあります。
奨学金を借りている学生は卒業後、働いてそれを返済していくことになります。
しかし、だれもが安定した就職先が見つかるとはかぎりません。それでも奨学金の返済を迫られるので、それが困難になる人が出てくるのです。
奨学金は、日本の将来を担っていくはずの学生が高い学費を賄うなど学業を続けていくために借りています。
その返済を迫る側の理屈は、「進学して利益を得るのは学生個人」という受益者負担の考えに基づいています。ただ、受益者負担と金融の論理だけで「借りたものは返せ」と押し通すのは奨学金制度の理念を体現したものとは思えません。
民間の債権回収会社に委託してサラ金まがいの取り立てをしたり、返済しないと延滞利息を課したりしても、制度そのものがうまく回っていくはずもないのです。
奨学金返済の延滞者の8割は、社会に出ても年収300万円未満の人が少なくないといいます。
だから返済能力のない若者を追い詰めるのは止めて、能力に応じて返済できるような制度に変えていく必要があります。
奨学金制度は、そもそも日本の将来を担っていく若者が売春に手を染めたり、振り込め詐欺に走ったりすることを想定して設けられたものではないはずです。
高学歴ワーキングプア――。
国立大の大学院を修了しても、2人に1人が定職に就けないという悲惨な実態があります。
専任教員を目指しながら、非常勤講師やコンビニ店員などで食いつないでいるフリーター博士も少なくありません。なかには、心を病んで引きこもりになる人もいるといいます。
政府は1991年、世界的水準の教育研究の推進をモットーに大学院生の倍増に乗り出しました。ところが、大学院修了者の受け皿として大学や企業など受け入れ態勢を整えていなかったので、結果的に大学院がフリーター生産工場になってしまったのです。
そこには、隠れた男女格差もあります。博士課程で学ぶ女性は増えているのに、専任教員の女性比率が低いという実態があります。
正規に雇用されない女性の行きつく先は、非常勤講師という不安定な身分。大学院修了者で、非常勤講師になる率は女性が男性の2倍以上といいます。なんと、大学院を修了した女性教員の実に40%が非常勤講師なのです。
そうした高学歴ワーキングプアもまた、奨学金の返済に苦しめられています。
全日空の大会議室に、かつて初代社長だった美土路昌一氏が語った「現在窮乏、将来有望」という言葉が浮き彫りになった額が掲げられていました。
だれもが「現在窮乏」という困難に立ち向かっていくには、ハングリー精神を発揮して「将来有望」を信じて創意工夫を繰り返しながら乗り切っていくしかありません。
将来を悲観的にとらえて何もしないよりも、とにかく知恵を絞って何かに挑戦していくことが大切です。
ともかく新しいことに何も挑戦しないということは、生き残り競争では最大のリスクとなってしまうのです。
0コメント