「カネは汚い」というメンタルブロックを外す
お金に関して、ユダヤの格言に次のようなものがあります。
<この世には、人を傷つけるものが3つある。悩み、諍い、空の財布――。3つのうち空の財布が最も人を傷つける>
ふつう「お金は天下の回り持ち」とされますが、何も行動を起こさないと端から自分のところにお金なんて回ってきません。それは、小学生でもわかる理屈。
ユダヤのタルムードには、次のようなくだりもあります。
<心を病むと、体が悪くなる。しかし、お金がなくなると、両方悪くなる>
タルムードとは、ヘブライ学者の議論を書き留めた議論集のこと。
お金について、よく「お金は汚い」と言い放つ人がいます。それは、まさにメンタルブロックの典型的な現れ。
メンタルブロックとは、何か行動を起こそうとするとき「それはムリ」といった否定的な意識の壁、制止しようとする思考のこと。
起業家は、お金についてメンタルブロックをできるだけ外すように心がけながら事業に取り組んでいくことが大切です。
なぜなら、経営とは基本的に事業を通してお金を稼いだり、支払ったりして資金を回していくことだから。
たとえば事業資金や運転資金がなくなると、販売促進のための広告さえ打てなくなります。
知人の経営者も一時期、そうした状況に追い込まれています。家具販売の集客のために広告を打ちたくても、経理を担当していた奥さんにこう言われたそうです。
「どこに、そんなお金があるの?」
知人は事業そっちのけで趣味のカーレースにのめり込んでいた間に売り上げが落ち込み、運転資金が底を尽こうとしていたのです。
ともかく、お金がないと会社も家庭も雰囲気がかなり悪くなります。
資金繰りに困った知人は、銀行に融資を依頼。
ところが、それまで向こうのほうから「借りてください」と言っていた銀行に業績不振の足元を見られて「貸せません」と冷たく告げられたのです。
そこで知人は金策に走り回り、行政の制度資金からも資金を調達しています。
1円でも欲しくて、いろいろ面倒な役所の書類も書いています。
当時、事業を続けても業績が好転しないのなら最初から経営の才能がなかったと思って事業から撤退しようと覚悟していたといいます。
起業したのが27歳で、再起を図ったのが33歳。
むろん、カーレースからはキッパリと足を洗っています。その会社は、店舗プロデューサー業を中心として見事に蘇っています。
ふつう起業家で「できる」と評価されている人は、私利私欲が一般人よりもかなり強いところがあります。この私利私欲に基づいた経営判断ができるということは、起業家として欠かせない資質のひとつ。
起業家は取引先との交渉の席に臨んだとき何が自社にとって得なのか、損なのかを瞬時に判断して相手と交渉しなくてはいけません。
ある意味、かなり「守銭奴」でないとできないところもあるのです。なぜなら、利益を上げないと会社を維持、発展させることができないからです。
そうしたシーンで、起業家に「お金は汚い」というメンタルブロックがあると事業を展開していく上で何かと逡巡し、決断が遅くなってしまいます。
それでは経営者の資質として十分条件どころか、必要条件さえ満たしていないのです。
起業家は、みずからデシジョンメイキング(意思決定)をしていくことでしか経営の本質なんて身につけることができません。会社を維持、発展させていくために断崖絶壁にでも臨んで見せるという覚悟を持って事業に真剣に取り組むことが大切です。
会社を経営するとは、その連続でしかないということです。
もちろん、サラリーマンや学生なども例外ではありません。
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