傍流が主流を侵食する時代が始まっている

  三省堂の辞書「大辞林」で「ギャル」という言葉の意味を調べてみると、そこには「若い女性」、とくに「陽気で若さにあふれた女性」と書かれています。

 ギャルという言葉が使われ始めたのは、確か1970年代。

 それが80年代後半になるとオジサンくさい言動をする「オヤジギャル」の登場をきっかけに、ギャルはそれに対比するものとして一気に全国区になっています。

 さらに90年代後半になると、英語と日本語を合体させた「コギャル」と呼ばれる女子高校生が登場します。

 コギャルは当時、歌手の安室奈美恵さんの格好をマネして顔や肌を浅黒く焼き、茶髪にルーズソックスといった奇抜な格好で街中をかっ歩していました。

 同年代のファッションリーダー的な役割を担って、流行を次々と作り出して社会から注目されています。

 そのころチョベリバなどのコギャル語も生まれています。

 チョベリバとは超ベリー・バッドの略語で、90年代後半に10代、20代の女子高校生の間で使われていた若者言葉のひとつ。超バッドよりも、さらに最悪であることを意味しています。

 コギャル語やコギャル文字は、社会現象として日本中を席巻。ギャルは目立つことに必死で、そうやって社会的なアイデンティティーやポジショニングを獲得していったのです。

 今の時代、女性を一括りで語るのが難しい状況になっています。

 少し前なら、ファッション業界にはエビちゃん(蛯原友里さん)やモエちゃん(押切もえ)のような強力なロールモデルが存在していました。エビちゃんは、20代前半の女性を主要な読者層にしている女性ファッション誌「CanCan」の専属モデルとして一世を風靡。

 そうしたエビちゃんのような確固とした主流がいないのが、今という時代です。

  モデルで歌手の「きゃりーぱみゅぱみゅ」さんは、日本の「カワイイ」文化の世界的なアイコンとしての地位を獲得。アイコンとは、憧れの的となる象徴的なものという意味。

 きゃりーぱみゅぱみゅさんは、青文字系と呼ばれるファッション雑誌の代表的なモデルで、多くの若者の支持を集めています。

  青文字系のファッション雑誌には、『non・no』、『MORE』、『Zipper』、『sweet』などがあります。

 そうした雑誌が主導するファッションは、奇抜で派手なゴスロリ系やビジュアル系、ストリート系といったもの。

 男性の目を意識したフェミニンさはなく、男性に媚びないガーリーさがあります。カジュアルで一般人にも親近感が湧きやすく、手軽にお手本にしやすいのが人気の理由。主に、10代後半から20代前半の女子に支持されています。

  一方、赤文字系とは、キレイ系のファッション雑誌の総称。そうしたファッション雑誌には、『JJ』、『ViVi』、『Ray』、『CanCan』などがあります。

 赤文字系の読者モデルは、キレイ系のプロのファッションモデルの延長線上のポジションをイメージさせます。

 それで青文字系のファッションは赤文字系を凌駕するような勢いで、まさに傍流が主流を侵食しているといった様相を見せているのです。

 そうした「傍流が主流を侵食する」といった流れは、いろいろな分野で今後も続々と生まれてくるでしょう。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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