もう田舎者と言われることはない


 ドイツのライプチヒには近世以降、多くの音楽家が移り住んでいます。暗に田舎であることを揶揄された住人のシューマンは、次のように答えたといます。

「ここには伯爵夫人も王女もいない。この町の貴族は150軒の書店と50軒の印刷所、30の定期刊行物である」

 大都市の華やぎより、自作の楽譜が出版されやすい町の文化が住民には誇りだったようです。

 ここには高いビルもないし、大きな店もありません。ひと昔前だと、そんなふうに敬遠していたはずの町に都会の働き盛りが居を移しているのです。

 一方、人口約4万人の丹波篠山市に2020年度だけで100人以上が移り住んだといいます。

 かつて、学校も役場も車道もすべてコンクリート造りにした村がありました。村長さんは当時、我が村についてこう語っています。

「もう田舎者と言われることはない」

 作家の石牟礼道子さんは、それを聞いて驚いたと書いています。

 確かに、日本にはそういう時代がありました。

しかし今、コンクリートに憧れる人は減っています。高いビルや再開発で町を飾り立てても、輝きは人ときのことでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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