アメリカの原罪は奴隷制度


「茶の本」などで知られる岡倉天心に、米国滞在中のこんな逸話があります。

 岡倉天心は日本画家の横山大観らと街を歩いていると、若い男たちからこう絡まれます。

「お前たちはチャイニーズか、ジャパニーズか、ジャワニーズか」

 侮蔑と差別が入り交じった問いに、英語が堪能だった天心はこう入り返したといいます。

「日本のジェントルマンだ。君らこそ、ヤンキーか、マンキー(猿)か」

と即座に返した。すると、絡んできた米国人はそそくさと立ち去ったといいます。

 天心の伝記などが伝える100年以上も昔の話ですが、コロナ禍の米国で今、アジア系の高齢者に対する暴力事件などが頻発し、沈静化の兆しがないといいます。

 街を歩いていて激しく体当たりされ、転倒して亡くなった人もいます。防犯カメラが捉えた映像をテレビで見た読者も、少なくないでしょう。

 米国メディアの調査によると、新型コロナに関連して人種差別的な暴言や冗談を浴びせかけられた人はアジア系のほぼ3分の1に上っています。

 暴行など身の危険を感じる人たちも少なくなく、呆れた怒りを禁じ得ない状況を迎えているといいます。

 著名な経済学者ポール・クルーグマンさんが格差について書いた本に、こう書かれています。

「全ての根源は人種差別問題にある。今でも残る奴隷制度の悪しき遺産、それはアメリカの原罪である」

 これが米国の現実なのかと、暗然とします。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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