競馬の予想屋に乗せられてはいけない

 20世紀半ばに亡くなったスペインの思想家であり、哲学者だったホセ・オルテガ・イ・ガセトは、こう述べています。

 「人間はすべての財を背に負う放浪者のように、あらゆる経験を背負っていく」

 そうだとしても、過去を引きずり、なにかとコンプレックスを抱き、人に嫉妬しながら生きていくのは決して楽しい人生ではありません。むしろ、苦悩のほうが少なくないはずです。

  だからこそ、なんとか生きていく上で自分のバックボーンとなるものを見つけ出していくことが大事になってくるのです。

 そして、コンプレックスや嫉妬心の呪縛から解き放たれたとき、初めて「生きること」や「働くこと」の本当の意味がわかってくるというものです。

  それを手に入れるための自己啓発や成功哲学、ライフプランなどについて書かれた本はそれこそ掃いて捨てるほど刊行されています。ネット時代になって、似たような言い分がさまざまなサイトでアップされ、垂れ流しにされています。

  しかし、そうした本やサイトに掲載されたものをいくら読んだとしても、著者の言い分を鵜呑みにするだけのことです。その言い分にしても、だれかの受け売りということも少なくありません。

  しかも、そうした著者の大半が実社会ではこれといった実績を上げているわけでもないのです。立派なことを述べていても、それが机上の空論で終わってしまっているケースも少なくないというのが実態です。

  まさに、そうした言い分は競馬の予想のようなものかもしれません。競馬の予想屋は、自分の予想通りに馬券を買っていたとしたら間違いなく億万長者になっているはずです。ところが、そうした予想屋はほとんど見かけません。

  要するに、これといった実績の裏付けがないスキルやノウハウなんて絵に書いた餅のようなものなのです。

  大事なのは、やはり自分の生き様から導き出した独自の意見を持つことです。

  人の一生は、その人の想像力の色彩によって染められていきます。

 そのプロセスで自己啓発や成功哲学、ライフプランなどについて書かれた本を参考にすることの意義を否定するわけではありません。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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