お金がからむワクチン話はすべて詐欺


 江戸川柳に「人参」とあると、野菜のニンジンではなく薬の朝鮮人参のことです。国産化される前の「人参」の価格は当時、15グラムほどで金1両だったといいます。

「人参の合ふ病なり運のつき」

「人参」が必要な病気を患うと、運が尽きて破産するということです。

 その高値は、庶民の間で人参がどんな難病も治してくれる万能薬と信じられていたからです。

 まあ、「人参」は希望の代価だったのでしょう。

「人参ができて看病ひとり減り」

 病気の親の「人参」のために、娘が身売りしたということを詠んでいます。江戸川柳では、人参と詠むと身売りという意味が多かったようです。

 そんな薬だったから、偽物も多かったようです。

 病の治癒への庶民の切実な願いが「万能薬」の幻想を生み、ニセ医者や悪徳売薬業者をはびこらせていたのです。

 コロナ禍の今、菅首相は今月下旬としていた医療従事者へのワクチン接種開始を中旬に前倒しにするといいます。

 ただ、欧米でのワクチン供給の遅れや輸出制限が伝えられるなか今後の予定数量確保には不安要素もあります。

 コロナ禍克服の決め手との期待が高まるワクチンですが、早くもワクチン接種やその予約をかたる特殊詐欺の電話が各地で相次いでいるといいます。

 元の暮らしの回復を願っている国民の切実な思い、それらが織りなす不安や焦りにつけ込む悪知恵は今も昔も変わらないようです。

 幸い〝希望〟に高値がついた昔と違い、ワクチンは無料で市区町村から送られてくるクーポン券を待てばいいことになっています。

 だから、お金がからむワクチン話はすべて詐欺なのです。

 誰もが抱く不安を希望に変える情報公開は、まさしく行政の責務だといえるでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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