偶然は準備をしていない人を助けない


 フレミングのペニシリン発見のように、科学史に残る大発見には偶然をともなうものが少なくありません。

 狂犬病ワクチンなどを開発したパスツールは、こんな言葉を残しています。

「偶然は準備をしていない人を助けない」

 忘れてならないのは、偶然を見逃さなかった研究者たちの日ごろの備えです。

 その点、コロナ禍に見舞われている今、全国で人員不足が危機的状況を招いている医療体制での準備はどうだったのでしょう。

 コロナ禍の冬場の再流行の懸念は、昨年の春先から指摘されていたことです。第1波の収束からの半年は、その準備期間だったはずです。

 よもや、感染が終息するという偶然を期待したわけではないでしょう。

 しかし、医療はコロナ感染者以外の手術延期や受け入れ停止など局地的な破綻が始まっています。

 その責を負うのは、病院や医療従事者ではないはずです。人員や機器、サービスの拡充には、国の支援が欠かせないことは明白です。

 ペニシリンのカビからの培養抽出に成功し、商業化に道を開いたのは英オックスフォード大の研究者です。人の命を救いたいという熱意と努力が、やがて感染症対策に結実したのです。

 この世に奇跡などなく、すべては必然なのです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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