コロナ禍の今、東京離れが目立つ


平安時代の歌人、鴨長明は、平安末期に戦乱や飢饉、大火などに見舞われた京を出て郊外に庵を建てています。

 そこで、60歳ごろ「方丈記」を著しています。

 庵の広さは書名の如く方丈(一丈=約3メートルの四方)といいますから、9平方メートルほどと小さく、質素だったようです。

「方丈記」には、こう記されています。 

「すでに五年を経たり。仮の庵もやゝふるさととなりて」

 ほんのしばらくのつもりが、長くなったようです。

 近くの子どもたちとの交流も、「心を慰むる」と記されています。

 生活しているうちに地域に馴染み、居心地が良くなったようです。どんな土地でも、「住めば都」ということでしょう。

 コロナ禍の今、東京離れが目立ちます。政府の統計では昨年後半、転出者が転入者を上回り続けています。

「密」を回避するために広がったテレワークが家で過ごす時間を増やし、それなら住環境を充実させようと地方への住み替えを考え始めた人が多くなったといいます。

 一方、経済的な苦境に直面し、別の生き方を違う土地に求めたケースもあるでしょう。

 こうした事態に応じて、全国の自治体のなかには移住者の受け入れに動いているところも増えています。

 地方移住を希望する人に選ばれるには、新しい暮らし方を模索する人の目線に立った環境整備が欠かせないでしょう。

「方丈記」では、大火で大部分が焼けてしまった京の都についてこう断じています。

「こんな危険だらけの場所に大金を使って家を建てるなど無益」

 住むなら安全で安心できる土地にと願う気持ちは、今も昔も変わらないようです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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