政府は想定外のことも想定しておけ


 ヨーロッパのルネサンス期の3大発明と言えば、活版印刷術、羅針盤、火薬でしょう。

 ドイツの修道僧が薬品に火を点けると爆発し、大きな石が屋根を突き破って飛んだという逸話が残っています。

 それでも実験を続けた修道僧は爆発で吹き飛ばされ、頭を天井にぶつけて脳が飛び散ったという説は作り話の域を出ていません。

 だが、人知を越えた巨大な力を利用しようという試みへの戒めとして語られたことは想像に難くありません。 

 新型コロナの今、緊急事態宣言が発出されている地域で起きていることは、ある種の「爆発」です。

 専門家が口にする「ステージ4相当」とは、爆発的な感染拡大を意味しています。政府や自治体が外出自粛や営業時短を求めても、制御できていない状況です。

 菅首相は昨年秋、所信表明演説でこう豪語しています。

「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」

 ところが、1月の施政方針演説では事実上、爆発を認めています。

「ステージ4を早急に脱却する」

 国民は、それを聞いて「絶対」はどこへ飛んで行ったのだろうと首をかしげています。

 想定外のことが起きたとき、政府は事象を過小評価しようとします。10年前、福島第1原発が水素爆発を起こした際、政府は「格納容器が爆発したのではない」と強調しています。

 そのときの教訓は、「想定外のことも想定しておく」だったはずです。

 長引くコロナ禍を前に、予想外の展開に対する政府の次善策がハッキリしないことに不安を覚えてしまいます。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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