程度の問題


 作家、星新一さんのショートショートに、心配性のスパイをあつかった「程度の問題」という話があります。

 この心配性のスパイは、アパートの部屋では盗聴器が隠されていないか壁や床をしつこく叩いて調べます。

 公園でボールが転がってくると「爆弾ではないか」と疑い、親切な人がタバコの火を差し出すと「毒ガスが出てくるのではないか」とライターを叩き落とします。

 最終的に、度を越した心配ぶりが人の目を引くためスパイをクビになります。

 先日、コロナ禍対策として緊急事態宣言が一部を除いて1か月延長されました。

 星さんの「程度の問題」に出てくるスパイのことを笑いたくなりますが、ここはそれぐらいの用心深さが必要な時期なのでしょう。

 かといって経済への影響も心配ですし、なによりも息苦しい生活に解除を期待した人もいたはずです。

 新規感染者数は、減少傾向にあります。しかし、ここで宣言を解除すると再拡大の心配も拭い切れません。

 だから、用心深く延長することに異論はありません。

 この生活がまた1か月続くかと思うとウンザリしてきますが、ものは考えようです。

 感染者増の傾向のなかでの延長ならともかく、対策の効果は出てきています。

 この延長の一か月を仕上げの期間と考えると、少しは心も軽くなるでしょう。少々遅れることにはなりますが、「春」は確実に近づいています。

 星さんの「程度の問題」には

続きがあり、後任のスパイは前任者とちがって「のんき者」です。

 で、後任のスパイは見知らぬ人からもらったお菓子をいい気になって食べ、たちまち毒殺されるのです。

 世界的なコロナ禍というパンデミックの前では、やはり用心に越したことはないということでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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