差別や憎悪にも心を乱さず努力を続ける


 1月22日、通算本塁打が755本のブレーブスの強打者ハンク・アーロンさんが86歳で亡くなっています。

 アーロンさんは、幼いころ

 大空に飛行機を見つけて父親にこう言ったといいます。

「大人になったらパイロットになる」

「黒人はパイロットになれない」

「じゃあ野球選手になる」

「黒人は野球選手になれない」

 アーロン少年は、父親の言葉があっても野球選手を目指し、やがて野球の神様ベーブ・ルースを超える選手となっています。

 黒人リーグに所属していた時代には、バットを逆に握っていたといいます。右打者の握りは右手が上にきますが、アーロン選手は左が上にきていたのです。

 アーロン選手は、それでも打てるほど手首が強かったということです。大リーグ時代のことを、こう書いています。

「ルースの本塁打記録を追いかけることは最高の喜びとなるはずだったが、最悪だった」

 大リーグファンのなかには、「

 白人のルースの記録を黒人が塗り替えるのは許せない」と考える人々がいたのです。

「引退しろ」

「キング牧師は早死にした」

 届いた90万通の手紙の大半は、脅迫や嫌がらせだったといいます。

 アーロン選手は、その手紙を捨てていません。逆に、それを見て記録更新の励みとしていたのです。

 自身の苦い経験もあって、王貞治選手がアーロンさんの通算本塁打記録を抜いたとき一切、ケチをつけないで称賛し、王選手の記録を認めています。

 練習の人で、差別や憎悪にも心を乱さず努力を続けています。

 偉大な野球選手であると同時に、差別や憎悪に晒されている人々の水先案内人になっていたのです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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