言葉と向き合うには攻めの姿勢も必要


 昨年11月に出版された「新明解国語辞典」(三省堂)第8版で、注目を集めたのが「恋愛」の項目です。

「特定の相手に深い愛情を抱き…」とし、9年前に発行された第7版の「異性」を「相手」に変えています。

 全国の自治体では、LGBTなど性的少数者のカップルを公認するパートナーシップ制度の導入が相次いでいます。

 高校入試でも願書の性別欄が廃止されるなど、多様な価値観を認めようとする動きが広がっています。

 新明解国語辞典編集部は、性的少数者についてこう述べています。

「ここ10年で多くの人々に受け入れられる社会的な体制が整いつつあり、編集部内でも話題になる機会が多くなっていました。社会的・文化的な背景のもとに、公器としての辞書の解説を変える必要性を感じ、全面的に見直しました」

 今回の新明解国語辞典の改訂は、社会の変化をいち早くとらえた攻めの動きと言えるでしょう。

 他の国語辞典を引くと、恋愛の解釈を「男女が互いにこいしたうこと」「特定の異性に特別の愛情を感じて恋い慕うこと」など異性に限定しています。 

 出版社だけでなく新聞なども含め言論を生業とする人は、従来の言葉の解釈を踏襲する一方、今の社会を反映した価値観を伝える「攻め」も忘れてはいけないでしょう。

 新明解国語辞典の編集姿勢に、攻守のバランスを保ちながらも言葉と向き合う重要性を改めて感じます。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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