菅政権のコロナ禍対策に国民の不安は募るばかり
ロシアの文豪トルストイの短編「イワン・イリッチの死」は、痛みの消えない原因が分からないことに戸惑い、不安を募らせていく男の様子を描いています。
この男は田舎で判事を務めていましたが、思いがけず昇進して意気揚々と新任地にやってきます。
しかし、住まいの準備をしている最中にハシゴから落ちて横腹を窓の取っ手に打ち付けられます。
そのために内臓を痛め、容体は次第に悪化していきます。
「時に希望のはかない滴が輝くかと思うと、時には絶望の海が荒れ狂う」
この文章には、新型コロナウイルスの感染者の気持ちにも通じるものを感じます。
症状が表れていながら入院先が見つからず、自宅やホテルでの療養を強いられると心細さはなおさらでしょう。
共同通信の調べによると、入院や療養先が見つかっていない感染者が緊急事態宣言の出ている11都府県で少なくとも1万5000人以上(1月19日時点)に上っていたのです。
しかも、自宅などで療養中に症状が悪化し、亡くなる人も相次いでいます。
今直ぐにでも、医療提供体制の一層の強化が必要なのは言うまでもありません。
それにもかかわらず政府は感染症法を改正し、入院を拒否する感染者に懲役刑を科そうとしていました。
世論の重すぎるとの反発を受けて撤回していますが、罰金は過料として事実上残るようになっています。
これは後手後手の批判に背を向け、感染拡大の責任を患者に転嫁するにも等しい行為です。
これでは罰則から逃れようと感染を隠したり、PCR検査を避けたりする人が増えかねません。
そんなこんなで、国民の不安は募るばかりです。
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