「カフカ去れ 一茶は来れ おでん酒」


 国文学者で、俳人でもあった加藤楸邨は、こんな句を詠んでいます。

「カフカ去れ 一茶は来れ おでん酒」

 おでんをつつきながら一杯やるときは、不条理や絶望を語る実存主義文学の先駆者カフカより庶民的で温かみのある江戸後期の俳人、小林一茶のほうがいいということでしょう。

 大寒の時期は、温かいおでんや鍋物が恋しいものです。

 支持率が急落した菅首相もコロナ対策が批判され、「冷ゆることの甚だし」と感じていることでしょう。

 先日の施政方針演説では十八番の「経済との両立」を封印し、コロナ禍対策を最優先する姿勢を見せています。

 菅首相も、やっと税金で旅行や外食を奨励しながら感染を抑えるという不条理に気づいたのでしょう。

 今や医療体制が逼迫して、患者は入院したくてもできない状況を迎えています。再度の緊急事態宣言で、外出自粛や飲食店の時短営業に逆戻りしています。

 この一年、政府は何をしてきたのでしょう。

 その実態は失政の反省がないばかりか、法改正を強行して言うことを聞かない人や店に「罰則を科す」と唱えています。

 感染に怯える高齢者や持病のある人、収入減や失業で困窮する人たちの絶望感は募るばかりです。

 国民の思いは、「カフカ去れ 庶民に優しい一茶のような施策来れ」といったところでしょう。

 一茶は、こんな句を詠んでいます。

「梅咲けど 鶯鳴けど 一人かな」

 感染対策の「最前線に立つ」と宣言した菅首相は、梅が咲き、鶯が鳴くころには国民が自由に外出でき、仲間とも一杯やれるように今度こそ行動で示してほしいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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