アンコウの触ヒゲが教えるもの

  気骨のある人の顔は、大人( たいじん)の雰囲気が漂っています。その点、いつも不遇を嘆いている人には、それが感じられません。

  たとえば深海魚のアンコウ――。

 その顔は何かに押し潰されたかのように幅広く、バカでかい口は横に裂け、下 アゴが上アゴよりも前に飛び出しています。見た目に迫力があり、ノコギリ形の鋭い歯がある顔つきは深 海のギャングといった感じです。

  平べったい頭の上に、触ヒゲと呼ばれる細い棒のようなものがあります。それを釣竿のよ うに動かし、小魚がエサだと勘違いして近寄ってきたところを海水と一緒に飲み込んで丸ご と食べてしまいます。

 触ヒゲは 、背びれの一部が変化したもの。その先端は、疑似餌(きじえ)とそっくりな造りになっています。 

 まさに生存競争が厳しい自然界を生き抜いてきた気骨のある進化が、そうした奇妙な触ヒゲ を生み出したものと考えられています。

 また染料の藍で染められた衣服は、何度も洗っているうちに何とも言えない味わいのある色 に変わっていきます。木綿や麻の衣服も、着れば着るほど風合いを帯びてきます。 

 人の顔にしても、人生という荒波に何度も洗濯されるうちに人間力のある味わい深い人物 としての顔になっていくのではないでしょうか?

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000