コロナ感染者に送付する封筒に葬儀社の広告


 かつて、武士はツバキの花を嫌ったといいます。

 ツバキは花弁をハラハラとは散らさず、花ごとポトリと落ちます。その散り方が首が落ちるのに似ているところから、武士は「縁起が悪い花だ」と嫌っていたようです。

 縁起を気にすればキリがありませんが、コロナ禍の今年もツバキが花を散らす季節が訪れています。

 不吉なものを避ける「忌」の漢字は、「己」と「心」で成っています。

 縁起に触ろうとも己の心次第であり、「気にしすぎるな」という教えもあります。

 ところで、大阪市が新型コロナウイルスの感染者に送付する封筒に葬儀社の広告が印刷されていたといいます。 

 ただでさえ気持ちの落ち着かない感染者に、嫌でも死を想像させる広告はやはり無神経というものでしょう。

 大阪市はこの封筒の使用を止めたそうですが、当然のことです。

 広告主の葬儀社にしても、人の不幸を当て込んでいるような印象を持たれては広告として逆効果でしょう。

 不思議なのは、大阪市の職員のだれもがこの封筒を使うと「縁起でもない」と市民から苦情がくると想像できなかったことです。 

 行政側もコロナ禍の対応に追われ、気働きに欠けるほど疲れているのかもしれません。

 もちろん、封筒を受け取った人はショックだったはずです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000