令和のプロジェクトXはコロナ禍を収束できるか


「蝦夷種痘図」は、幕末の安政年間に実施された幕府のアイヌへの集団種痘の様子を描いた絵です。

 当時、和人やロシア人から感染した天然痘で免疫のないアイヌに多数の死者が出ていた時代です。

 この絵には並んで順番を待つアイヌに種痘を施す幕府が派遣した医師2人、上座の奉行ら役人3人、記録する書記役などが描かれています。

 種痘を終えたアイヌたちはいろりを囲んで懇談し、会場には食器や布など種痘の報奨品も積まれています。

 同じような絵は何種類かあり、褒美の菓子であやしても泣きじゃくっている子どもの姿も描かれています。

 医師らは各地の居住地を回り、当時のアイヌ人口の半数以上に種痘を施したといわれています。

 それは、多くの命を病魔から救った幕末の一大プロジェクトだったのです。

 先日、

 新型コロナウイルスのワクチン集団接種のシミュレーションが行われています。川崎市の短大の体育館では、受け付けや医師の問診、接種、接種後15分の待機といった一連の流れとその時間が確認されています。

 これは、河野太郎担当相に言わせると関係省庁や各自治体、医師会や医療機関、関連企業をまたぐ国家的「プロジェクトX」です。

 しかし、すでにワクチン接種が進んでいる欧米からはワクチンの供給の遅れなど不首尾も聞こえてきます。

 アイヌの集団種痘では一部で住民が山に逃げたこともあったようですが、ほぼ説得が受け入れられたといいます。

 令和の「プロジェクトX」の詳細が決まるのはこれからですが、くれぐれも地域と医療の実情を軽んじないようにしてもらいたいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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