人事権がおよばない国民は動かせない菅首相の限界


 菅首相は、安倍前政権の官房長官時代から「反対すれば飛ばす(左遷する)」という脅しで官僚を動かしてきました。

 しかし、リーダーとは本来、「説得」によって人を動すもので、その説得の労を惜しんで安易に人事を使うのは指導者として横着な姿勢でしょう。

 日本は今、コロナ禍の〝第3波〟に襲われています。

 菅政権のコロナ禍対策の対応の〝まずさ〟を分析すると、「説得の軽視」という菅首相の政治姿勢のツケが随所に露呈しています。

「勝負の3週間」や年末年始の活動自粛の呼び掛けが不発に終わった経緯を見ると、「国民の行動様式を変えさせる」ことは想像以上に難しいことです。

 そこで重要なのが、リーダーの「言葉の力」です。

「コロナ慣れ」や「自粛疲れ」に陥りそうな国民に情と理を尽くした言葉で呼び掛け、最適な行動を取るように動かす必要があります。

 相手が官僚や与党の政治家なら、「言うことをきかないなら飛ばすぞ」という脅しで動かすこともできるでしょう。

 ただ、そもそも国民を「飛ばす」ことなど不可能です。罰則にも限界がある以上、最も有効なのは「説得」なのです。

 しかし、菅首相のこれまでの会見を聞いても「人の心に届く言葉」がほとんど見当たりません。

 菅首相の発言録を読むと、飲食店への営業時間短縮強化要請に慎重だった東京都への恨み節がにじんでいるばかりです。

 しかし、これだって菅首相自身が知事を説得して動かすこともできたはずです。

 菅首相が「自分の人事権がおよばない国民や知事は動かせない」というのであると、それが菅首相の限界ということになります。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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