試験会場には閻魔大王が住んでいる


 かつて中国の官吏登用試験「科挙」は、「貢院」と呼ばれる試験会場で行われていました。

そこには、閻魔大王がいると受験生に信じられていたそうです。

 それは、受験生が試験の際に入れられる何千、何万もの独房から成る巨大施設だったといいます。たとえば南京の「貢院」には、最盛期で2万以上の独房があったようです。

 試験中は兵によって「貢院」が封鎖され、警察権もおよばない治外法権区域となったといいます。受験生は、その独房に1科目で2泊3日のカンヅメ状態に置かれたといいます。

 まさに、ほとんど監獄みたいなものだったのです。

 そこを支配する閻魔大王は、受験生の日ごろの行いの善悪に応じて答案の出来を左右すると考えられていたといいます。

 ピアノを習っている子どもがよく見る夢は、ピアノの発表会の夢だといます。

 いざ特訓の成果を弾き出そうとすると、肝心の曲が思い出せないというのです。さっきまであったはずの楽譜も消え、どうしようと焦っているところで毎回、夢は覚めるといいます。

 誰にでも、若いころの経験に基づく怖い夢にうなされるということはあるでしょう。

 歌人の斎藤茂吉は、こんな試験の夢を詠んでいます。

「試験にて 苦しむさまを ありありと 年老いて夢に 見るはかなしも」

 1931年の作といいますから、50歳近いころの作品です。

 いくつになっても、夢に見るほど試験の不安と緊張はなかなか忘れられるものではありません。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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