コロナ禍での〝権力の暴走〟を注視せよ


 文筆家トマス・ペインは、米独立革命を思想的に支えた人物です。

「米国の代表民主政こそ古代アテナイの民主主義を大規模に、より完全に実現させた」

 それは、新しいアテナイを目指した米民主主義の初心でもあったのです。

 首都ワシントンに建つ歴史的建造物の多くも古代ギリシャやローマを理想とする新古典主義様式で、米国会議事堂もその一つだといいます。

 しかし、アテナイの民主政がその栄光を極めた後に扇動政治家と衆愚政治によって衰亡したことも忘れてはいけません。

 その手の扇動政治家のことは、ドイツ語でデマゴーグと呼ばれています。派手な弁舌で民衆の恐怖や怒りを煽り、その熱狂を権力に変えていく人物のことを指しています。

 5人の死者も出たトランプ大統領支持派による議事堂乱入、占拠事件は、トランプ大統領の扇動が巻き起こした米民主政治の前代未聞の不祥事です。

 議事堂への行進を促したのはトランプ大統領自身で、事件後も彼らを「愛国者」と呼んでいます。

 しかし、トランプ大統領は事の重大さを悟ったのか急に事件の非難に転じています。

 米民主主義の〝聖廟〟を襲撃した行為に対して超党派の非難が噴出、トランプ大統領も罷免要求も広がっています。

 トランプ政権の閣僚や高官の辞任表明も相次ぎ、孤立したトランプ大統領はバイデン次期大統領への円滑な政権の移行を約束しています

 メディアは、トランプ大統領が大統領選挙の敗北を初めて認めたと報じています。

 トランプ大統領の変わり身の早さは、デマゴーグの成せる業です。ただ、その口から突然「癒やしと和解」の言葉を聞いても安心はできないでしょう。

 デマゴーグの時代を迎えた世界では、日本も含めてコロナ禍での〝権力の暴走〟が危惧されています。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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