中途半端な美人がブスを嫌う深層心理

 独特の語り口で知られるエッセイスト、酒井順子さん。

 酒井さんは、これまで著書『負け犬の遠吠え』などで女性の心理を鋭く分析してきました。

 著書『下に見る人』では、見た目や自分だけの価値観で誰かと自分を比べて、「私はまだマシ」と判断し、優越感をもった経験について触れています。

 だれにでもある経験――。  

 酒井さんは、著者『下に見る人』で、友だちに酷いニックネームをつけた小学校時代、ファッションセンスでクラスメイトをランキングしていた高校時代などを振り返っています。

 そうしたことを「美人かブスか」「金持ちか貧乏か」など24のテーマで分析しています。

  たとえば「ブス」の項目。そこでは辛口のコメントを炸裂させています。

 09年に発覚した「首都圏連続不審死事件」の犯人とされ、一審で死刑判決を受けた木嶋佳苗被告を例に挙げ、なぜ女性がブスを嫌うのかを分析しています。  

「私を含め、中途半端な容姿の人がブスを嫌うのは、『自分とブスの間に、きっちりと一線を引いておきたい』と強く思っているから」

 なるほど!

 要するに、木嶋被告は自分のブスさ加減に気づかずに、まるで美人であるかのような犯罪をやってのけ、美人であるかのような態度を貫いているというのです。

 まさに、「極めつきのブス」による「中途半端な容姿の女性」に対する領海侵犯――。

 酒井さんは、女性はそこに目くじらを立てているのだと指摘しています。

 それで「ブス」を「貧乏」や「非エリート」に置き換えると、自分の立ち位置が「中途半端」だからこそ、自分より少し下の人を「下に見て」安心したいのだと分析しているのです。

  だれにでもある「他人を下に見たい」という欲求――。

 それは、一生ついて回る深層心理かもしれません。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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