〝腰振りネエチャンの生き様に見る日本の実相


 コロナ禍でも越年営業したスパリゾートハワイアンズ(旧常磐ハワイアンセンター)は、福島県南部のいわき市にある一大温泉施設です。

 この施設の名前を聞いて映画「フラガール」を思い浮かべる人もいるでしょう。

 地元・常磐炭田の炭鉱閉山にともない、地域浮揚のため1966年に開業したハワイアンセンターの実話を基にした秀作です。

 ハワイアン構想を進めた常磐炭礦の中村豊副社長(当時)は、唐津炭田があった佐賀県北波多村(現唐津市)の生まれだといいます。

 採炭の邪魔になる温泉湧出を逆手に取り、「2年で潰れる」との批判をよそに炭鉱住宅6000戸の従業員と家族に断言しています。

「君たちは2度と炭鉱には戻れない。センターが永久の職場なのだ」

 そして、自ら社長に就いています。

 当時、 プロダンサーによる特訓を受けるヤマの女たちは「腰振りネエチャン」と蔑まれたといいます。

 それを乗り越えて、今があるのです。

 東日本大震災の大津波で被災した東京電力福島第1、第2原発に近い同県富岡町周辺は「常磐炭田の北端にあたる」といいますから、その一帯はフラガールの地と繋がっているのです。

 戦後、農業の衰退と過疎化が進み、原発が誘致されています。原発は雇用を生み、出稼ぎが減っています。

 原子力は石炭に取って代わった石油から主役の座を奪い、より高みを目指す日本経済が欲したエネルギー革命を起こします。

 しかし、東日本大震災は危惧していた原発事故を引き起こします。映画「フラワーガール」で、豊川悦司さんが演じた炭鉱マンはこう言い放ちます。

「時代が変わったからってぇ、なして俺らまで変わんなきゃなんねぇ?勝手に変わっちまったのは時代の方だべ」

 東日本大震災で家族と故郷を失い、避難生活を強いられている人が10年経っても今なお全国にいます。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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