何でもできる人なんていない


 人気コミック「鬼滅の刃」に主人公とともに鬼と戦う若者がいます。

 登場する剣士たちは様々な剣術を駆使しますが、この若者はただ一つの技で戦っています。修行時代、上達できずに師の元から何度も逃げ出しています。

 技の伝授を諦めた師は諭すように、この若者に語りかけます。

「お前はそれでいい。一つのことしかできないなら、それを極め抜け」

 今の世の中、「なんでもできる」ことを求めがちで、親も子どもについそれを求めてしまいます。

 しかし、何でもできる人は大人でも少ないのが現実です。

 リアルは、一つでもできること、やりたいことがあると生きるよりどころになるということでしょう。

 そもそも何もできなくたって、否定されるものでもないでしょう。何もできない大人なんて、履いて捨てるほどいます。

「鬼滅の刃」では、この若者は主人公をしのぐ人気だといいます。

 若者は怖がりで鬼から逃げ回りますが、危機に遭遇すると豹変します。雷撃のごとく一瞬で倒すその技には、「霹靂一閃」という名がつけられています。

 コロナ禍は、社会を支える人たちの存在を見える化しています。医療従事者やスーパーの店員、荷や人を運ぶ運転手、介護スタッフなどは、それぞれができることを黙々と続けています。

 もちろん、若者は誰でも唯一無二と定めて磨き続ける技を持っているはずです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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