加速する少子化


 童話劇「青い鳥」では、これから生まれる子どもたちを送り出す「時」という老人が登場します。

「出て行く時刻の来た子どもたち、用意はいいか」

 背が高く長い髭を蓄えた老人は、そう言って扉を開けます。手には、砂時計と鎌を持っています。

 その「未来の王国」という大広間には、地上にもたらす禍福など様々なものを携えた子どもたちが誕生の時を待っています。

 老人「時」は生まれるべき子どもの数が間違いなく揃っているかをチェックし、地上行きの船に乗せるのです。

「お前たち、遅れたらもう生まれられないぞ」

 老人「時」に急かされた子どもらが船出すると、遠くからお母さんたちの喜びと希望の合唱が聞こえてきます。

 しかし、今年は老人「時」も子どもたちも戸惑うコロナ禍に見舞われています。

 全国の自治体が受理した今年の1~10月の妊娠届の件数は、前年同期比5・1%減という激減ぶりを示しています。

 コロナ禍による将来への不安のためとみられ、民間シンクタンクからは来年の出生数は80万人を割るという推計が出ています。

 少子化で減り続ける出生数ですが、初めて90万人を割ったのは昨年です。推計通りなら、わずか2年で今度は80万人割れとなります。

 老人「時」ならば何かの間違いかと、手元のリストを見直すでしょう。この推計は、少子化予測を約10年も前倒しする数字だといいます。

 背景となる婚姻数の減少も著しく、巣ごもり生活による出会いの機会の減少は今後も続くはずです。

 この世に子どもたちを呼び寄せるためには、まずウィズコロナ時代を生きている人たちが喜びと希望の歌を取り戻さなければならないでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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