人は感情的な生き物


 新聞やテレビなどの記者は、日ごろネタを拾いに街に出ます。ベテラン記者がネタを拾う馴染みの場所の一つに、「密」が極まる酒場があります。

 ところが、今年はコロナ禍に見舞われ、記者も心底まいっているといいます。

 たとえば残暑の9月上旬、ある記者は夕方から社外の勉強会に出かけました。例年なら勉強会が終わった後で軽く一杯となるのですが、今年は東京都の時短要請で飲食店が早じまいをしていました。

 そこでコンビニで買った酒をレジ袋に入れた数人が「公園にでも行こうか」となり、到着するとあちこちのテーブルでマスク姿の老若男女が宴に興じていました。

 星空の下、風通しもよく、それでもいかがなものかと自問しながら飲む酒には〝背徳の味〟がしたといいます。

 それでも「オンライン飲み会」とは違って、人の表情をリアルに見ながらの宴は楽しかったそうです。

 ただ、人は感情的な生き物で、その共有はオンラインでは満たされません。

 数日前、その記者は同じ公園をふらりと訪ねてみました。すると誰もいなくて、警備員が1人立っていたといいます。

 ワクチン開発の朗報はありますが、再感染の報告もあり、コロナ禍の制圧は依然、不透明です。地震や台風のように、今後も長く共存を覚悟させられる可能性もあります。

 いずれにせよ、「不要不急」でも人には必要なことがあります。リスクとどう折り合うのか、本当は酒場で議論したいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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