銅像の原形がなくなる


 モスクワの地下鉄は、スターリン時代の1930年代半ばに開業しています。地下深くを走り、冷戦時代は核戦争への備えにシェルターとしての利用が想定されています。

 宮殿のような豪華な駅が多く、なかでも革命広場駅には兵士や農民、学生たちの76体の銅像が飾られ荘厳な雰囲気が漂っています。

 これらの銅像のなかで、国境警備兵が連れている犬の鼻は乗降客になでられてピカピカです。その昔、工科大学の学生が試験の成功を祈って触ったのが始まりという「都市伝説」があります。

 ほかにも市民の願掛けによって部分的に磨き上げられた像は、あちこちにあります。たとえば商売繁盛をもたらす水兵のピストル、昇給を約束するおんどり、読書する女学生の靴は不幸な恋に落ちるのを防ぐといったようなものです。

 たまらず地下鉄公社は、「銅像の原形がなくなってしまう」と触らぬように呼び掛けています。

 今年のモスクワっ子の切実な願いは、やはりコロナ禍の退散でしょう。ロシア全土で感染者は約290万人に達し、モスクワ市だけでも70万人を超えています。

 ロシアは世界で初めて国産ワクチンを承認し、接種を始めています。だが、臨床試験を見切り発車しての接種には安全性への懸念がぬぐえません。

 世論調査で、無料でも接種を受ける用意はないと答えた人が約6割に上ったのもうなずけます。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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