今冬はダイコンが武士に変わってくれるか


 江戸時代中期の俳人で、画家でもあった与謝蕪村は、徒然草にちなんだ句の多い俳人として有名です。その一つに、次のようなものがあります。

「武者ぶりの髭つくりせよ土大根」

 土大根(つちおおね)とは、ダイコンの異名です。徒然草には、土大根の精が屈強の武者となって来襲する敵を撃退してくれるという話があります。

 土大根の精が敵から助けてくれたのは、土大根が万病を治すと信じて毎朝、必ず焼いて食べていたからです。

 この話が後の江戸時代の庶民に好まれたのは、毎日のようにいろいろな総菜にして食べているダイコンがヒーローになるというおもしろさからでしょう。

 熱い出汁の染み込んだダイコンのおいしい季節を迎えましたが、徒然草の時代には病や災いを打ち払う力もあると思われていたのです。

 昨今、ダイコンの値段はいつもの年より大分安いといいます。しかも葉物を初め野菜類がそろって安値で、レタスやキャベツなどは平年の半値近いになっています。ハクサイやネギも安くて、家庭で鍋という方には心強い限りでしょう。

 この野菜の安値は、台風の被害もなかった今秋の好天による豊作のおかげといいます。

 一方で、コロナ禍による外食の需要減もあり、作物の廃棄を強いられる農家も続出しています。

 冬の野菜は、これからの寒さによる凍結を防ごうと甘みや栄養を増していきます。

 この冬は、

その恵みを味わえるありがたさを生産者に感謝しつつ来襲するコロナ禍を打ち払う武者も現れてほしいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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