ワクチン接種が始まった


 明治時代、紀州・広村を襲った津波で村民の避難を誘導した「稲むらの火」の物語のモデルでもある浜口梧陵は、その後、私財を投じて広村堤防を築いています。現ヤマサ醤油の7代目で、公共事業家でもありました。

 ラギリシャ生まれの新聞記者(探訪記者)で紀行文作家、日本研究家でもあったラフカディオ・ハーンは、「生き神」という一文で梧陵の事績を顕彰しています。

 梧陵は、医療への支援でも大きな役割を果たしています。名高いのは、江戸の西洋種痘所が焼失した際に何百両も寄付して再建させたことでしょう。

 種痘所を作った幕府内の開明派が大老だった井伊直弼によって左遷され、再建が絶望視されていたときのことです。

 この種痘所は、のちに東大医学部となっています。

 世界中がコロナ禍に見舞われている今、種痘に始まるワクチンの開発はその闘いの決め手となるでしょう。

 今回、スピード開発された新型コロナのワクチンの接種が始まりました。その接種を始めた英国の保健相は12月8日、この日をワクチンと勝利の頭文字を冠した「Vデー」と呼んでいます。

 認可を受けたワクチンとしては世界初で、英国内の指定病院で医療・介護従事者や80歳以上の高齢者などを対象に接種されていきます。

 米国でも近くワクチン接種が始まりますが、これら感染状況の厳しい国の局面転換への期待を集めています。

 日本での接種開始の時期も気になりますが、感染症への対処は人類的な課題でもありますので途上国にも適正に配分する必要があるでしょう。

 途上国向けワクチンの国際共同調達をはかるCOVAX(コバックス)などの取り組みは、しっかり支えたいものです。

 梧陵は津波防災で世界的に有名ですが、その種痘の普及への志も日本人として受け継がなければならない志でしょう。

が、この10年ほどの政権は対話を通して多様な意見を取り入れる努力に欠けている印象が拭えません。

 この1年の新型コロナウイルス感染対策に限っても、医療現場や自治体との対話の欠如が目に余って仕方がありません。

 異論や反論に耳を貸さず、突き進む政治権力は危うい限りです。日本学術会議の任命拒否問題は、うやむやに終わらせてはならないでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000