ふるさと納税はゼロサムゲーム
年の瀬は、ふるさと納税が1年で最も増える時期です。なぜなら、1月から12月までの寄付額が所得税や住民税の控除の対象になるからです。
ネットの仲介サイトでは、歳末セールのようなPRで「駆け込み寄付」を誘っています。
ただ、ふるさと納税は、自治体が〝共食いをする仕組み〟になっています。大都市から小さな村まで、それぞれ財源を奪い合うという制度で成り立っているのです。
食うか食われるかの仁義なき戦いですが、このことは意外と知られていない側面かもしれません。
たとえば東京都民が秋田市に寄付をすると秋田市の収入は増えますが、東京都に入る住民税が減ります。逆もまたしかりで、どこかの自治体が得をすると当然、どこかの自治体が損をします。
つまり、この制度によって地方がすべて潤うわけではないのです。
多くの自治体が今、自主財源に乏しく、ふるさと納税によってたくさんの寄付を欲しがっています。
こうした状況がもたらすものは、お得な返礼品競争と〝官製ネット通販市場〟の膨張です。
その結果、稼いだ者勝ちの風潮が強まり、ネット通販大手アマゾンのギフト券などで年間500億円近くを荒稼ぎする自治体も現れています。
全国の自治体の職員からは、こうした不満や愚痴も聞こえてきます。
「上司から『黙って見ているだけじゃ税収が減る。返礼品をかき集めろ』と言われた」
「これといった特産品がないのに、どうやって寄付を集めたらいいのか」
ふるさと納税を利用すると、実質2000円の負担でブランド牛肉や海産物の返礼品が手に入ります。その仕組みを支えているのは、誰かの善意でも魔法でもなく納税者の血税と次世代が背負う借金です。
しかも、高額所得者ほど税控除の限度額が高くなるようになっています。この富裕層の税金を控除で〝おまけ〟にする仕組みには、やはり首をかしげてしまいます。
確かに、ふるさと納税の寄付のおかげで実現した政策があちこちにあり、喜んでいる住民もいます。
ただ、返礼品や財源への欲望をまとった寄付行為は篤志の寄付文化を大きく歪めかねません。
やはり、ふるさと納税は返礼品競争のない寄付制度に再編するべきでしょう。
ゆかりのある地域の応援や被災地再建の手助け、具体的な事業の後押しを目的にして税控除を減らすように再構築し、自治体の〝共食い〟は止めにすべきです。
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