我々は奇妙な時代に、社会に生きている
ロックバンド「ビートルズ」のジョン・レノンが、ソロになって2枚目のアルバムに収録されている名曲「イマジン」を発表したのは1971年のことです。
「想像してごらん、天国などないと」
この歌は宗教や国家、所有欲を否定することで、人々が争いなく暮らすユートピアの実現を呼び掛ける内容です。
ロックの精神、思想について、それは「反抗心である」という人もいます。一方、「ラブ&ピースである」という人もいます。
ロックの精神、思想が「ラブ&ピース」だとすると、「イマジン」は、その代表曲と言って間違いないでしょう。
音楽評論家やロックファンに「ロック史上最も重要な曲は」という趣旨のアンケートをすると、「イマジン」は必ず上位に入る曲だといいます。
一方、ジョン・レノンがその翌年に出したアルバム「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」には「反抗」が満載です。
1曲目が「女は世界の奴隷か!」で、女性が不当に低い立場に置かれている状況を告発する歌です。
黒人差別や英国の北アイルランド弾圧なども取り上げ、収録曲の多くが政治や社会の抑圧への抗議の色を帯びています。
意外なことは、ラブ&ピースの代表曲である「イマジン」がしばしば放送局による放送禁止や自粛の憂き目に遭っていることです。
「イマジン」が発表された当時、米国はベトナム戦争の真っ最中でした。アルバムには、「兵士の戦意を喪失させる」という理由で放送禁止になったと記されています。
2001年、米国で同時多発テロが起きたときも、米国のラジオ局は報復感情に燃える世情に配慮して「イマジン」を放送自粛曲のリストに載せています。
社会が何らかの理由で極度に好戦的になると、反戦歌どころか「ラブ&ピース」の歌さえも邪魔者扱いにされ、敵視されるということです。
周りのみんなが軍歌を歌い出したとき、自分だけ「イマジン」を歌うことができるでしょうか。そこでは、「ラブ&ピース」を歌うことが明らかな反抗となります。
そんな奇妙な時代に、社会に、我々は生きているということでしょう。
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