大切なのは語り手の眼差し


 先日、94歳で亡くなった元フランス大統領のバレリー・ジスカールデスタンさんは、演説のコツについて「大切なのは語り手の眼差し」と書いています。

 どんなに大きな会場でも、小さな会合でも、出席者すべての人間を個々眺めるよう努力するのだといいます。そうすることで人を引きつけ、自分もまた人からエネルギーをもらえるというのです。

 ジスカールデスタンさんが伝えたかったのは、演説のコツではなく政治家としてのコツだったのかもしれません。

 政治家は群衆全体ではなく、一人ひとりの顔を強く意識して語りかけなければならないということでしょう。

 ジスカールデスタンさんは現在のサミットに繋がる先進国首脳会議を提唱したほか、欧州統合への下地づくりなど外交上の成果を残しています。

 国内においては女性の権利向上にも取り組み、女性閣僚を積極的に起用した大統領でもあります。

「7年間の大統領在任中、私はすべてのフランス女性に恋していた」

 お国柄もあるでしょうが、ここまで言い切れる政治家はいないでしょう。

 それに比べると、菅首相は記者会見でいつも俯きがちで、その「眼差し」はだいたい手元の原稿用紙に向けられています。

 しかも、それを読み上げるばかりで記者の質問には正面から答えようとしません。

 記者会見をテレビで見ている国民の多くは、とても菅首相から大切に思われているとは思えないでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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