第2の〝就職氷河期時代〟が直ぐそこまできている


 高校生や専門学校生、短大生、大学生にとって、就職は社会人としての第一歩です。その入り口がコロナ禍で狭められるとしたら、当事者に落ち度はないだけに〝不条理〟を感じてしまうでしょう。

 コロナ禍の今、リーマン・ショック後に続く第2の〝就職氷河期世代〟を生むような事態が訪れることが心配されています。すでに、コロナ禍の感染拡大が来春卒業予定の大学生の就職活動に影を落としています。 

 実際、10月1日時点の内定率は7割に届かず、前年同月を7ポイントも下回っています。さらに、短大生や専修学校生の内定率も大きく落ち込んでいます。

 今年の就職戦線は人手不足で超売り手市場だった昨年とは大きく様変わりした印象で、異例ずくめの就職活動となっています。

 春先に予定されていた合同企業説明会が軒並み中止になり、緊急事態宣言の発出で大学は立ち入りも制限されています。そのため大学での就職相談や模擬面接もオンラインとなり、学生の支援が難しくなっているのです。

 内定率が下がったのは、コロナ禍による経営悪化で採用数を絞り込んだり、取りやめたりする企業が増えたのが要因です。大手航空会社による採用活動の中止が、その典型的な例でしょう。

 こうした状況の事態収束が見通せず、影響の長期化も懸念されています。

 2022年度についても、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが総合職などの採用中止を決め、JTBなど旅行業大手では採用見送りの動きが広がっています。

 航空業界や旅行業界は、就職先として人気が高いところです。志望する学生にとって、進路を閉ざされたショックは大きいでしょう。状況次第では、採用の削減、中止が他の業界に広がる恐れもあります。

 人員削減や構造改革に取り組む企業が、新卒採用に慎重になるのはやむを得ない面もあります。しかし、経営者は中長期的な視野で若者を採用して活躍の場を与えることが重要であることも忘れてはならないでしょう。

 個別企業には最善の選択でも、社会全体としては大きな問題となります。多くの企業は、バブル崩壊にともなう1990年代半ば以降の就職氷河期を通じて学んでいる教訓があるはずです。

 政府は、新卒採用の維持や卒業3年以内は新卒扱いで採用するよう経済団体に要請しています。既卒者にも企業との接点を提供するなど、政府や大学には一段と踏み込んだ対応が求められるでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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