今年の暮れは借金を返せない人が街をうろつく


 江戸時代、浮世草子や人形浄瑠璃の作者で、俳諧師でもあった井原西鶴の作品「世間胸算用」には、大みそかに借金取りに追われる江戸時代の庶民の悲哀が描かれています。

 ある登場人物の男は「自害する」と叫んで包丁を振り回し、借金取りを退散させています。後で芝居とばれますが、年越しも命がけだったようです。

 当時はツケで買い物をし、代金は盆と暮れ、とくに大みそかにまとめて支払う習慣がありました。今のボーナス払いに近いとも言えますが、用立てられない人もたくさんいたようです。

 コロナ禍に見舞われた今年、年末も庶民の懐具合には厳しい寒風が吹きつけています。コロナ禍による打撃が大きかった航空、百貨店、レジャー業界などでは冬のボーナスの5割減や8割減が相次ぎ、なかにはゼロの会社すらあります。

 中小企業はもっと深刻で、大阪では中小企業の半数がボーナスを支払えないという調査結果も出ています。

 こうした状況下、庶民の多くから住宅ローンや奨学金の返済にも困るといった悲鳴が上がっています。 

 西鶴の生きた時代、お金が多く出回る貨幣経済が発達し、それに伴って貧富の差も拡大しています。

 実際、富裕層ではなかった西鶴も生活は苦しかったといいます。大みそかには、借金取りに居留守を使っていたといいます。

 安倍前政権では「景気回復」のかけ声ばかり大きく、毎月の給料がなかなか増えないアベノミクスが長らく続いています。

 今でもコロナ対策として、日銀が大量のお金を世の中に出回らせています。最近の株高も、そうした金余りのためだといいます。

 それだけ溢れているのに、なぜ国民行き渡らないのでしょう。

 政府は近く新たな経済対策を決めるといいますが、地道に働いてきた人を借金で命がけにさせてはならないはずです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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