脱炭素社会への流れが強まった


 東京電灯会社(現東京電力)は1910年(明治43)、米国製の電気自動車を購入しています。この購入を報じた新聞で、次のような宣伝を繰り広げています。

「電気自動車使用者のためにすこぶる便宜をはかり、市中各所の配電所及び各使用者自宅へ出張して、電気の注入をなすべし」

 まだガソリン車がクルマ社会の主流の座を占める前のことで、米国でも約4万台の電気自動車が走っていた時代のことです。

 当時、電気自動車は経済的で運転が簡単、静かで故障しないなど良いことずくめのクルマととらえられていました。

 ただ、弱点もあり、今と同様に燃料となる電池の問題がありました。しかも、車体が重くて走行距離が短く、充電できる場所もあまりなかったのです。

 そのため、ガソリン車のT型フォードが普及すると一気に駆逐されています。

 しかし、その覇権に今、盟主交代の時期が訪れようとしています。

 政府は、地球温暖化対策としてガソリン車の新車販売を2030年代半ばに禁止する方針を固めています。

 ガソリン車の販売ゼロへの流れは、すでに英国が30年、米カリフォルニア州が35年までにというものになっています。

 政府の方針では、日本メーカーが強いハイブリッド車(HV)はガソリン車に含まれていません。

 そのHVや電気自動車(EV)、水素燃料電池車(FCV)などが今、次世代のクルマの〝T型フォード〟の座をめざす大競争を繰り広げています。

 振り返ると、ガソリン車の覇権は石油と大量生産・大量消費の文明をもたらしています。

 ただ、日本の企業も自らの強みを生かすのはいいのですが、脱炭素社会への大転換を見誤らずにまだ見ぬ明日へ挑んでほしいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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