コロナ禍の今、菅首相の〝調律師〟としての力量が問われている


 ピアノの鍵盤を押すと、なかに組み込まれたハンマーが弦をたたいて音が出ます。ハンマーは羊の毛を使ったフェルトで、弦は鋼です。

 ピアノの調律師の仕事は、音程を合わせる調律の他に音色をつくる整音の作業もあります。硬めの音を出すならハンマーのフェルトを削り、軟らかい音は針を刺して弾力を出します。

 いずれもプロの力量が問われる仕事で、目指す音が決まっていないとフェルトと鋼のなかで道を見失うことになります。

 その点、菅政権のコロナ禍対策は目指す方向を定められに迷走しているように見えてしまいます。

 実際、感染の〝第3波〟が急拡大し、各地で感染者数が最多を記録しています。同時に、医療現場の緊迫も指摘されています。

 東京などの大都市では、飲食店への営業短縮要請も始まっています。菅首相は、この期におよんで「この3週間が極めて重要な時期」としてマスク着用や手洗い、3密回避などを訴えています。

 しかし、菅首相がこだわる「Go To トラベル」をめぐっては見直しを求める専門家と経済を回したい政府の認識がかみ合わず「調律」は難航しています。

 しかも、国の事業の停止判断を求められた知事たちとの間には〝不協和音〟も鳴り響いています。

 コロナ禍対策の硬軟のバランスは難しいと思いますが、政策がハーモニーを奏でるには菅首相が専門家や現場の声に真剣に耳を傾けて適切にタクトを振るしかないでしょう。

 今まさに、菅首相の〝調律師〟としての力量が問われています。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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