たまにはボーっとして生きよう


 気象庁は11月10日、1953年から続けてきた「生物季節観測」を見直し、来年から対象種目を大幅に削減すると発表しています。

 これまで列島各地でのサクラの開花やホタルの初見の日などを気象台の職員たちが捉え、国民に知らせる営みは「季節の便り」として親しまれてきました。

 大幅削減の理由は近年、気象台周辺での標本木の確保や対象動物の発見が困難になっていることだといいます。

 大規模災害が多発するなか、気象台の仕事はレーダー解析などによる予報に大きくシフトし、他の業務まで手が回らない事情もあるようです。

 ただ、自然と直に向き合うことは、気象業務の原点であるはずです。その姿勢が失われていくことで、国民と自然との共生意識が薄れていくことが気掛かりです。

 今の世の中、アナログは時代遅れとされ、デジタル化がさかんに叫ばれています。確かに、効率や便利さの点でデジタルの恩恵は大きいでしょう。

 しかし、〝スマホ漬け〟の弊害が指摘されるように、デジタル化は行き過ぎと思える面もあります。実際、脳生理学者たちは「デジタル依存症は脳を壊す」と警鐘を鳴らしています。

 スマホやパソコンの画面を一日中見詰めていると脳は絶えず緊張状態に置かれ、それが慢性疲労やうつ病などを引き起こすというのです。

 最近読んだ本によると、脳を元気にし、心身の健康を保つポイントは太陽の光を浴びて運動をすることだといいます。

 ウオーキングや山歩きを通じて自然に接するのは、コロナ禍による巣ごもり生活で溜まったストレスの緩和にも繋がりそうです。

 世の中の情報に振り回されたり、流行に遅れまいと強迫観念に駆られたりする必要はありません。

 身近な動植物に目を向け、季節の移ろいの中にのんびり身をゆだねる時間を持つのも、本来の人間らしい暮らしというものでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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