政府が制度設計した事業の停止判断を自治体に丸投げするのは無責任極まりない


 古代中国の書物「易経」に、「君子は豹変す」という格言があります。

 君子とは、立派な人物のことです。豹変とは、季節に応じて毛並みの柄が変わるヒョウのように言動がガラリと変わる例えです。

 これを、立派なことを言っている人でも都合が悪くなると態度を一変させることという悪い意味で使っている人もいます

 しかし、格言には続きがあります。

「小人は面を革(あらた)む」

 通して読むと、君子は過ちに気づくとキッパリと態度を変えるが、度量や品性に欠ける人は表面を改めるだけという意味になります。

 これが、この格言の本来の趣旨です。

 ところで、コロナ禍の

 急速な感染拡大を前に、菅政権の対応はあまりに鈍く、後手後手に回ってはいないかとの疑念を禁じ得ません。

 菅政権は先日、ようやく観光支援事業「Go To トラベル」の一部制限に乗り出しています。ただ、その見直しは小幅に止まっています。

 全国知事会は、「これでは他の地域に感染を拡大させてしまう」と懸念を示しています。

 そもそも各種の「Go To」事業は、感染収束後に実施するはずのものでした。しかし、菅政権は〝第2波〟と呼ばれる感染拡大が始まった7月にトラベル事業を前倒しで始めています。

 その後も、経済回復のアクセルを踏み続けています。日本医師会がトラベル事業に危機感を示しても、菅政権は事業継続の姿勢を貫いています。

 一方で、感染拡大を防ぐブレーキへの配慮が希薄だった結果、現状の〝感染急拡大〟があると言わざるを得ません。

 さらに菅政権は、事業継続の判断を自治体に委ねる姿勢も変えていません。農林水産省は「Go To イート」事業の制限を始めましたが、都道府県にプレミアム付き食事券の新規発行の一時停止検討などを求める内容に止まっています。

 感染状況は地域で異なり、地方の意向を尊重することは大切ですが、政府が制度設計した事業の停止判断を自治体に丸投げするのはあまりにも無責任というものでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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