赤頭巾ちゃん気をつけて


 1960年代、映画興行のピークはすでに過ぎていました。

 そのころ、映画俳優が自分で製作会社を設立する動きがありました。三船敏郎さんの三船プロや勝新太郎さんの勝プロ、石原裕次郎さんの石原プロなどです。

 三船さんと長くタッグを組んできた映画監督の黒沢明さんは、三船さんの会社経営には反対していたといいます。

「三船さんのあの性格では、社長業は無理だろう。気を遣う人間が増えて、神経をやられるだけだ」

 もちろん三船プロでも成功した作品がありますが、その後、三船プロは倒産しています。

 11月18日、東映代表取締役グループ会長で、映画プロデューサーだった岡田祐介さんが71歳で亡くなっています。

 岡田さんも、元役者でした。

 プロデューサーとして、高倉健さんと吉永小百合さんが共演した「動乱」や「天国の駅」などの製作指揮を執っています。

 映画の初主演は、庄司薫さん原作の「赤頭巾ちゃん気をつけて」でした。学生運動がピークを迎えたころ、東大入試がなくなった高校生の薫君をリアルに演じています。

 あの時代のエネルギーと苦悩する若者を描いた良作であり、岡田さんは不思議な存在感を見せていました。

 思慮深く、繊細な薫君が、そのまま大人になった印象もありました。

 俳優の難しさを知る映画会社のトップで、俳優の経験は強みとなったはずです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000