雇用の受け皿が満杯


 コロナ禍の影響による失業者が7万人を超えるなか、雇用の受け皿となってきたウーバーイーツの配達員に〝逆風〟が吹いています。配達員の数が増え過ぎて収入が落ち込んだという声が続出しているのです。

 ウーバーと出前館の二強にフードパンダやウォルトなど新規参入も相次ぎ、今後はさらに報酬が引き下げられる恐れがあります。失業や収入の低下に悩んで飛び込んだ世界でも、窮地に陥りかねません。

 東京・三軒茶屋のマクドナルド前はウーバーからの配達依頼が多く、稼ぎを狙う配達員が行列するため〝ウーバー配達員の聖地〟と呼ばれています。

 派遣会社を辞めてウーバー配達員を本業にした50代の男性は、こう嘆いています。

「コロナ禍が拡大した3月ごろから配達員が急増し、10月になって『Go To イート』が始まってから配達員の間で仕事の奪い合いになった。今では、収入は3割近く減っている」

 半年前に配達員を始めた30代の男性は、こう不安を抱いています。

「このままでは、以前のバイク便のようになるのではないか」

 バイク便はバブル期に急拡大しましたが、その後、過当競争により配達員の報酬が引き下げられています。

 男性は、東京の私大大学院で化学の修士号を取得しています。リーマン・ショックで就職に苦労し、ようやく正社員生活を送り始めたところでコロナ禍に見舞われています。

 在宅勤務となって労働時間の報告を何度も求められ、心身を崩して退職しています。

 配達員は、1回の配達で約500円の収入があります。朝から晩まで約30件をこなすと、週6日で月収約35万円になります。さらに週2日、福祉施設で夜勤のアルバイトもこなしているといいます。

「稼げるうちに稼いでおきたい」

 出前館は2020年8月期決算で過去最高の売上高を記録しましたが、人件費がかさみ最終赤字です。調査会社は、こう警鐘を鳴らしています。

「働き手が次々と集まってくる現状では、待遇改善は期待できない」

 今後の報酬の引き下げも、十分にあり得るのです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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