職人の技に名誉の陽が当たる


 文化庁は11月17日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が日本の宮大工らが継承する「伝統建築工匠の技」を無形文化遺産に登録するよう勧告したと発表しています。

 職人たちの地道な鍛錬や苦労、辛抱によって現代にまで伝えてきた技建造物木工や茅葺、漆生産、畳製作など17件の技術が、世界から認められた無形文化遺産となるのです。

 和の建築は日本の気候風土のなかで生まれ、原風景を成しています。それは、「伝統構法」とよばれる職人技術で造られています。

 この伝統的な技術は、美しい風景と豊かな日本文化を育んできています。それは過去の技術ではなく、持続可能な社会を創り出す力をも秘めています。

 小説家で、随筆家でもあった幸田露伴の作品「五重塔」を読むと、塔の普請をめぐる2人の大工職人の話で18世紀後半の職人気質がうかがえます。

 登場する職人は手は抜かず、どんなに時間がかかっても丁寧に仕上げます。強いこだわりと、自分がこしらえたものに対する意地と誇りがあります。

 大嵐の晩、仕事を依頼した寺側は出来上がった塔が倒れないかと心配しますが、請け負った大工は見に行こうともしません。

 そんな職人の技に今、ユネスコの無形文化遺産という名誉の日が当たるのです。

 ただ、後継者不足という悩みも抱えています。封建的な匂いも残る徒弟制度によって育てられるところもある職人技ですので、叱られることが苦手な今どきの若者たちはその世界に及び腰にもなるでしょう。

 この登録によって、若者が伝統建築の魅力に目を向けてくれることを願います。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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