政府は公衆衛生の責任を国民に〝丸投げ〟


 コロナ禍にともなう感染拡大の〝第3波〟の局面を迎えても、政府はGoToキャンペーンを進め、国民にマスク会食を推奨するだけの政策しか提示できません。

 まさに政府は公衆衛生の責任を国民に〝丸投げ〟している感じで、国民は自分で魔よけのために張る〝お札〟にすがるしかないといった有様です。

 昔から庶民は疫病を恐れ、おまじないに頼ってきたところがあります。たとえば京都では、疫病よけに「上酒有」と書いた紙を戸口に張ったといいます。

 酒を売り歩く妖婆が病を広めるとの俗説があり、この紙を張ると疫病が近づかないという〝おまじない〟のひとつです。

 文人の大田南畝は、この話を聞いて狂詩で迷信を笑い飛ばしています。

「酒は池のごとくあり、謹んで妖婆に謝(絶)す」

 そして、随筆に病よけの〝お札〟とされた「釣船清次」の由来について記しています。

 かいつまんで説明すると、江戸の釣り船屋、清次は突然現れた大男に釣った魚を与えます。大男は疫病神だと名乗り、清次に「お前の名を張っておけば家には入らない」と約束します。

「釣船清次」は病よけの〝お札〟となりますが、南畝は実は大男が盗賊だったとのオチをつけています。

 全国各地で似たような疫病よけの張り紙や〝お札〟の話が多く残っているのは、昔の人が疫病を家から遠ざけたいという切実な思いがあったからでしょう。

 コロナ禍の〝第3波〟が感染拡大の局面を迎えている今、以前より明らかに増えているのは家庭内感染です。東京では、感染経路がわかる新規感染者の4割以上が家庭内感染だといいます。

 疫病神ならぬウイルスを家に持ち込むのは、自分の感染を知らない家人なのです。家庭内感染の増加は、今までの夜の街などのホットスポット対策が通用しない局面を表しています。

 南畝のオチではないですが、コロナ禍の経済苦で犯罪に走る人が増えています。コロナ禍の感染拡大も心配ですが、犯罪の増加も気になります。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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