ワクチン頼りの経済の先行きは不安でいっぱい

 


 伝説的投資家テンプルトンは、こう述べています。

「ブル(雄牛=強気)相場は悲観のもとで生まれ、懐疑のなかで育つ」

 コロナ禍の感染拡大が止まらない米国で、ニューヨーク株のダウ平均株価が史上最高値を更新して3万ドル台に迫っています。これを受けて、東証の日経平均株価も29年ぶりに2万6000円台を回復しています。

 まさに、雄牛が突進している相場です。

 株価が上がった理由は一昨日、米製薬大手モデルナが新型コロナウイルスのワクチン開発の進展を発表したからです。

 それによると、3万人以上が参加した治験で94・5%の有効性が示されたというのです。これを聞いて、強気の雄牛が悲観の霧を吹き飛ばして突進していくのも無理はないでしょう。

 先日、米ファイザー社のワクチン製品が90%以上の有効性を示したという発表もあり、ワクチンへの期待が高まっていた市場です。

 しかも保管にマイナス70度の冷凍庫が必要なファイザー社製に比べ、モデルナ社製のものは保存がたやすいといいます。

 次々にもたらされるワクチンの福音ですが、その効果や安全性については結論が出たわけではありません。

 テンプルトンが言う強気相場が懐疑とともに育つとは、こういうことを指すのでしょう。

 ただ、テンプルトンのブル相場論はこう続きます。

「楽観のなかで成熟し、熱狂とともに消える」

 ワクチンの効果や安全性の見極めは、現実を見失った安易な楽観や熱狂とは無縁でなければならないはずです。

 感染拡大が続くなかでの、このワクチン株高はワクチン頼りの経済の先行きをも表しているのでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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