徹底的な復讐の鉄槌


 エーゲ海で海賊に拉致され、自分の身代金の額を聞いたとき、後にローマの独裁者となるカエサルこう豪語しています。

「お前たちは誰を捕らえたか知らないのだ」。

 そう言って、20タラントの身代金を50タラントに増額させたといいます。

 身代金を支払うほうにとって迷惑な人質ですが、カエサルは監禁中も笑いながら「お前らを処刑する」と語り、海賊たちを笑わせたといいます。

 実際、身代金が支払われて解放されると直ちに軍船を率いて海賊の拠点を急襲し、一網打尽にして処刑しています。

 身代金を意味する英語「ランサム」は、古代ローマの抵当や質の「受け戻し」を指す言葉が起源といいます。質に入れてもいないのに、日本語で「人質」というのと同じ言葉の使用法です。

 ゲーム大手「カプコン」にサイバー攻撃を仕掛けた集団が大量の同社内部データを入手したとして、消去と引き換えに多額の仮想通貨を要求しているといいます。集団はその一部とみられるデータをネットで公開し、重ねて取引するよう求めています。

 まさに、データを人質にした身代金の要求です。弱みを握られた被害者には理不尽で、腹立たしい人質の受け戻し要求です。 

 近年増えているのはランサムウエアという暗号化ウイルスでデータを使えなくし、暗号解除キーと金銭を交換する手口です。今回の攻撃では、データを写し取った上でこの手口も用いているといいます。

 データの誘拐や監禁をたくらむ悪知恵の進化には、どうしても一歩後れを取り勝ちなサイバーセキュリティーです。

 カエサルを捕らえた海賊たちの後悔をサイバー攻撃犯に思い知らせる方策は、徹底的な復讐の鉄槌を下すことでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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