喋る人形に癒される高齢者


 荒川区に住む高齢の男性は、〝家族〟の手術が成功したという報告を受けて妻とともに病院に駆けつけています。

「元気になって、本当によかった」

 黄色い毛糸の帽子と赤いセーターを着た幼い〝家族〟の姿を確認すると、2人は胸をなで下ろしています。

 幼い〝家族〟は瞼が閉じにくくなり、治療のために入院していました。

 男性が頭をなでると、幼い〝家族〟パチパチと瞬きし、「お歌を歌おうかな」と甲高い声を上げて童謡を歌い始めます。

 そう、幼「おもちゃの病院」に入院していた幼い〝家族〟とは2人が可愛がり、愛情を注いできた「お喋り人形」だったのです。

 このお喋り人形が2人の家族になったのは、7年前のことです。

 お喋り人形は、夫婦2人の暮らしのなかで家を明るくしてくれました。男性は毎日、この人形を抱いて寝るのが習慣になっていました。

 本当の子どもや孫たちは、遠方に住んでいます。

「この子は、孫も同然です。思い出もたくさんあり、代わりはいません」

 おもちゃの病院は、荒川区南千住で毎週水曜日に開いています。

 担当者が、こう明かします。

 「孫や子どもの代わりにかわいがっている『話す人形』を持ってくる高齢夫婦が増えています

 これは、現代の家族の形を映す現象でしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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