米国の〝民意の振り子運動〟は振れ始めたのか
19世紀初頭、米国の民主主義政治を観察したフランスの思想家トクビルはこういう言葉を残しています。
「米国人の重大な特長は他の諸国民よりも文化的に啓蒙されているだけではなく、欠点をみずから矯正する能力をもっていることにある」
その「欠点を矯正する能力」の表れが選挙における〝民意の振り子運動〟と、それによる共和党・民主党という2大政党間での政権交代の繰り返しです。
米国の歴史は、民意のスイングごとに新しいページを開いてきています。
今回の大統領選挙は、米国政治の〝振り子の時計〟が壊れてしまったのかと世界を心配させています。
両党の支持者間の激しい対立は、内乱をも彷彿とさせるものだったからです。
投票日から4日後、ようやく民主党のバイデン候補の勝利宣言が出ています。
「これは国民にとっての勝利だ。私は分断ではなく結束をめざす大統領になる」
バイデン候補の演説は、敵と味方を明確に分断して支持者を固めようとするトランプ政治への否定です。
同時に、それは米国の政治の正統への復帰宣言でもあったのでしょう。
初の女性で、黒人・アジア系の副大統領となるハリス候補の演説も、多様性とその権利のための闘いが米国の力の源泉であることを訴え、政権交代の振れ幅を示してみせています。
「すべての小さな女の子はこの国が可能性の国であることを知る」
今回、辛うじて米国政治の振り子はスイングを再開したのかどうか見極めるには時間がかかりそうです。
一方、トランプ大統領はまだ敗北を認めていません。
しかも、民主党支持者も築くべき未来の米国の姿について考えがバラバラです。
今回の米国大統領選で世界中が見せつけられたのは、「トランプ的なもの」対「反トランプ的なもの」という明確な〝分断〟でした。
そして、「トランプ的なもの」の支持者は圧倒的に白人が多いということです。
ニュース映像を見ていると、それが強く見て取れます。そこには、黒人の姿がほとんど見られないのです。
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