黒人差別が選挙結果の取引に使われる時代ではない


 米国大統領選の歴史で最も物議を醸したのは、1877年に共和党のヘイズ大統領を誕生させた選挙でしょう。

 ヘイズ候補は一般投票で民主党候補に大差をつけられながら、各州選挙人の数で1票上回って大統領になっています。

 フロリダなど3州で両党がそれぞれの勝利を主張して事態が紛糾し、議会の委員会が選挙人を再配分した結果としてのヘイズ勝利だったのです。

 一方、民主党が譲歩したのは代わりに南北戦争による南部占領を終わらせる取引があったからだといいます。

 ヘイズ大統領は「いかさまヘイズ」と揶揄され、1期のみを約束した治政での南部占領終結は黒人差別を長く温存させる結果を招いています。

 こうした紛糾の歴史もある大統領選の選挙人制度ですが、21世紀の今日でも健在で〝物議〟を生み続けています。

 世論調査では、今や米国民の3分の2が一般投票での選出を望ましいと考えているといいます。しかし、必要な憲法修正について尋ねると半数をやや上回る程度に減ってしまうのです。

 修正へ議会や各州の合意を得るのは容易でないのが実情のようです。

 今回の大統領選では民主党のバイデン候補の勝利が有力視されるなか、トランプ大統領は法廷闘争で決着の引き延ばしを図るつもりなのでしょうか。

 良くも悪くも確実なのは、ヘイズの時代のような2大政党の妥協による決着はありえないということです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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