男の顔は履歴書


 評論家の大宅壮一さんは、「マスコミの王様」と呼ばれていました。晩年の5年間(1965年10月~70年11月)、週刊誌「サンデー毎日」の「サンデー時評」で健筆を振るっています。

 その大宅さんの没後50年の今年、研究者向けの完全復刻版が編まれています。

 大宅さんは、よくこう言っていたそうです。

「俺の書くものは生モノだから日持ちしないよ」

 そんな口癖とは裏腹に、今読み返しても古びていません。それどころか、テーマも世相も「いま」の引き写しなのが怖いほどです。筆鋒の鋭さは、今日のジャーナリズムを顔色なからしめます

 大宅さんは日韓基本条約について、岸信介元首相らの利権追及を素通りした国会審議を激烈に難じています。

「議会政治は死滅した。政治家の“集団発狂”というべき症状」

 一方で、国民大衆が「現体制を支持するムード」を批判しています。

 吉田茂元首相が亡くなると「ワンマン的性格は生活の苦労を全く知らぬから生まれた」と皮肉り、戦後初の国葬に「新憲法に規定がない」と異を唱えています。

 汚職事件との関わりが疑われた自民党総裁公選に、こう警鐘を鳴らしています。

「詐欺の場だ。我々はもっと驚こう」と警鐘を鳴らす

 大阪万国博覧会には、こう言って反対しています。

「ギャンブル、虚栄の市。思いきって延期せよ」

 当時、日本学術会議の会員選挙で白紙の投票用紙取りまとめ事件がありました。「

 大家さんは「サンデー時」で、学者の国会も退化する例として論じています。

 大宅語録に、有名な「男の顔は履歴書」というものがあります。大家さんなら「令和おじさん」と「強権人事発令者」を使い分ける菅首相の顔貌を何と形容したでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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