ぼちぼちに、いきまひょか


 江戸っ子の気っ風を表した文句に、こういうものがあります。

「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し 口先ばかりではらわたはなし」

 口では荒っぽいことを言っていても、腹の中はさっぱりしているという意味です。

 半面、粘りや土性っ骨には欠ける江戸っ子の弱さも浮かんできます。

 その点、大阪人の気性についてこんな川柳もあります。作者は、大阪出身の作家、田辺聖子さんです。

「気張らんと まあぼちぼちに いきまひょか」

 焦らず、着実に一歩一歩という人が多いのでしょう。

 物事の判断に慎重で、大きな変化を好まない大阪人の気質も少し見えてきます。

 大阪市を廃止し、4特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票では反対が賛成を上回り、否決されています。

 この2015年の住民投票に続く2度目のノーという結果は、荒療治より「まあぼちぼちに いきまひょか」という判断なのでしょう。

 ただ、その僅差は大阪市民が賛否を悩み抜いた末の結果に違いないものだったのでしょう。

 府と市の二重行政による弊害や財政の無駄を取り除くという都構想の理想は分かりますが、むしろコストが増えかねない恐れもありました。

 やってみなければ分からない都構想への期待よりも、「ほんまでっか」の疑問が最後は上回ったのかもしれません。

 決着はつきましたが、大阪を2分した〝分断〟の闘いのしこりが心配です。

 大阪人にはシャクでしょうが、ここは是非とも江戸っ子の「はらわたはなし」の気持ちでいきましょう。

 そうしないと、米国の二の舞になってしまいます。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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